隣人の庭にざくろの実がなった
殻のように厚い皮が裂け
こぼれるように
赤い実が熟す
それをひとつ分けてもらう
乾燥した固い皮を
包丁に力をかけ二つに割ると
水々しい小さな粒がはじけた
丁寧に薄皮を取り除き
口に入れると
果汁が口の中に溢れる
舌にざらつくような
さらりとした甘さ
いつもざくろ特別な果物のように感じていた
妙な情熱やら
怨念を感じ
ただの罪のない果物に
なぜ心惹かれるのだろうと思っていた
すると隣人は
鬼子母神の話をした
皮は赤子の肌の色
こぼれる赤い実は
赤子の肉
そして滴る無邪気な血
いつ誰が
赤ん坊を食らうことを
ざくろに重ねたのか
汁を口の中にゆっくり含み
かすかな渋さに
赤子の血の味を遠く思い出す
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