Saturday 15 May 2010

手をつなぐ

街頭の明るい通りに出ると
あなたはさりげなく手を振りほどいた
つながっていた温かさを失い
私の手は心細く宙を泳ぐ

食卓の上におかれた
今では硬く節くれだった手を見る
この手の温度と
その柔らかさを知っていたことも
あったのだなと驚く
そっけなく目をそらし
食事を続ける

今日並んで歩くとき
娘が手を握らせてくれた
やわらかくいとしいその手は
今となっては唯一
私が触れることができる手

白く温かく今でも解けてなくなりそうで
固く握ったものか
そっと離したものか
途方にくれる

人は簡単には
手を握らせてくれない

手をつなげば心がつながるというわけでもなく
触れる表面が
寂しくざらっと感じることもあるというのに

それでもどうして人は
手をつなごうとするのだろう

耐えかねて
娘の手に唇を当てる
彼女は手を引くこともなく
ただされるままに
私に手をゆだねている