Tuesday 22 December 2009

最後の海

サーフボードを抱え
震えながら水から上がる
塩辛いしずくを垂らしながら
早足で岸に向かう

背中に温かさを感じ
振り向くと
太陽が海に傾きかけていた

固くまっ平らな砂浜が
海水と交じり合い
海とつながる場所で
もう一度海を見る

もう海水浴客は来ない
アイスクリーム屋も店を閉めた

勇敢なサーファーが一人
冷たい水に首まで浸かり
水平線の向こうを睨みながら
じっと
最後の波を待っている
日が沈んでしまわないうちに
もう一度だけ
波しぶきの先端に立つために

砂浜には
律儀に義務を遂行するライフガードが
ランドローバーの中から
双眼鏡でじっとサーファーを見ている

誰もが何かを凝視し
何かを待っている
日が暮れるまでの短い時間に
海の向こうの何かを
もう一度だけ
確かめるために

その光景を私は心に納める
昔の記念写真のように
カバーにはさんで
胸にしまいこむ

いつの日か
悲しくなることが起こったとしても
この光景を思うと
心が凛とするだろう
私はまだ美しいものとつながっているのだと
思い出すことが出来るだろう

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