サーフボードを抱え
震えながら水から上がる
塩辛いしずくを垂らしながら
早足で岸に向かう
背中に温かさを感じ
振り向くと
太陽が海に傾きかけていた
固くまっ平らな砂浜が
海水と交じり合い
海とつながる場所で
もう一度海を見る
もう海水浴客は来ない
アイスクリーム屋も店を閉めた
勇敢なサーファーが一人
冷たい水に首まで浸かり
水平線の向こうを睨みながら
じっと
最後の波を待っている
日が沈んでしまわないうちに
もう一度だけ
波しぶきの先端に立つために
砂浜には
律儀に義務を遂行するライフガードが
ランドローバーの中から
双眼鏡でじっとサーファーを見ている
誰もが何かを凝視し
何かを待っている
日が暮れるまでの短い時間に
海の向こうの何かを
もう一度だけ
確かめるために
その光景を私は心に納める
昔の記念写真のように
カバーにはさんで
胸にしまいこむ
いつの日か
悲しくなることが起こったとしても
この光景を思うと
心が凛とするだろう
私はまだ美しいものとつながっているのだと
思い出すことが出来るだろう
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