あなたは歌う
さわさわと風の流れる
どこまでも広い平原に立つように
見渡す限りの海原を
白いヨットですべっていくように
ツバメが自由自在に
夏の空を横切っていくように
人気のない深いプールの底を
息を止め千々にきらめく光と泳ぐように
優しい友達が
無言で手を握ってくれるように
恋人が枕元で
静かに平安な寝息を立てるように
あなたの歌は
心を自由にする
変わることのない確かな手が
あなたの中から
ためらいなくとりだした
その歌を聴き
私も同じ手に包まれる
深い森の中のしっとりとした匂いの中で
木漏れ日を見るように
その透けて見える薄緑の木の葉の
若々しい輝き
そこにいるのは
今の私になる以前の
新しくやわらかい私で
その私はじっとしていられず
光の中で踊りだす
体の中が嬉しさで満ち溢れ
飛び跳ねないではいられないように
そして透き通る小川に
美しい小魚が
音を立てずひっそり泳いでいくように
夏の静かな雨が
乾いた地面に慈悲深く染み透っていくように
あなたは歌う
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