G先生が自殺した翌日
子供たちは学校に行く
何度も親を振り返り
手を振って教室に消えていく
G先生が自殺した翌日
親たちは子供を学校に連れてくる
笑って子供を見送っては
校門でひそひそと囁きあう
G先生が自殺した翌日
先生たちは早く出勤する
職員室での会合の後
誰もいない教室で
教材をもう一度確かめる
出席が取られ
給食費が集められる
教科書を広げ誰かがそれを読み始めると
教室は静かになる
昨日まで普通だったものを
珍しいものを眺めるように
一つ一つ指で取り上げては
積み木を積んでいく
退屈で整然とした詳細を
慣れない手つきで不器用に集めなおす
休み時間が来ると
子供たちはいつものようにざわざわと
話をしながら校庭に出る
誰かが倒した椅子がひとつ
床に転がっている
子供達がいなくなると
教頭先生は数秒壁に眼をやる
そしてほっとしたように
歩いて
椅子を拾い上げる
暗く暗く暗く
冷たい場所では
G先生が梁からぶら下がっている
誰もまだ知らない数時間
車の音も
庭の鳥の声も届かない
空気のしんとした闇の中で
静かに
静かに
静かに
先生は揺れている
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