Wednesday 3 November 2010

競泳の朝

3月の日曜の早朝
フロンドガラスの凍った車の
エンジンをかける

まだ対向車の一台も無いまっさらな道を
低い光を浴びながら
遠くまで車を走らせる

固く張りついた草原の霜は
弱々しい太陽の光を浴び
しっとりと薄いもやを立ち上げる
サングラスをしっかりかけ
東に向かい
ハンドルを固く握る

隣に座る娘は
水着とゴーグルの入ったかばんをひざに抱き
遠くの丘を見つめている

あと10分で
競技会のプールに着く

プールサイドまではついて行こう
そこで私はバイバイと言い
水際を離れ
観衆の中に席を取る

たった一人であなたは飛び込み台に向かう
キャップを調節しゴーグルを確かめる
体をかがめ
腕をまっすぐに伸ばし
スタートの合図に耳をすませる

でもまだ今は
ラジオから低く流れるポップソングを聴きながら
外の景色を見つめている
ぼんやりと窓に頭をもたれされ
かばんの取っ手をもてあそんでいる

あなたは大丈夫

機は熟し
しっかりと準備ができていることを
体の隅々まで感じながら
身動きせず
朝の光景を見つめている

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