朝カーテンの向こうから
薄明かりが射していることに気づく
窓を開けると
空気が少しいいにおいがした
まだ弱々しい欧州の光に誘われて
長靴を履き外にでる
りんごのつぼみは膨らんでいないものの
足元に
水仙の芽を見つける
そこにはまだ何一つ色が無い
伸びた芝は泥にまみれ
長靴の下で
ぐちゃぐちゃと醜い音を立てる
畑は雑草に覆われ
収穫されなかったにんじんが
泥の中で腐り始めている
そのとき草の中に
小さく赤いものを見つける
腰をかがめ覗き込むと
てんとう虫だった
思わず手を伸ばしかけ
また引っ込める
この寒さの中で本当に生きているのだろうかと
急に怖くなる
「飛びますように」
そう短くつぶやく
まるでその薄い翼が
春を連れてくることができるかのように
ひっそりと祈る
泥の中に膝をつき
同じ言葉を何度も真摯に繰り返す
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