Sunday, 11 October 2009

泳ぐ

地上での暮らしに疲れると
水の中にもぐる
ゆっくりとしたペースで
プールを往復する
水底の黒線は
私の行く手を迷うことなく指し示す

水の中の世界では
光は千々に踊り
地上の喧騒も
そこまでは届かない
時間が流れ方を変える

次第に
体温は水と同化する
羊水の中では
どこからが体でどこからが水なのか
わからなくなる

空を飛ぶような
なめらかな努力で
泳ぎ続ける

2つの世界のちょうど交わるあたりで
わたしは水面に上がるのをためらう
もう少し息を止めて
この世界にとどまりたい

あともう少し
あともう少し
息を止めて
もうちょっと

突然
はじかれたように水面に飛び出す
大きく息をついで
心臓の激しさに驚く

体をぶるっと震わせて
プールの底を探して足がもがく

生きているのだ
水の世界に2分ととどまれぬほど
わたしは生きることを欲しているのだ


命はそんなにも激しい力で
わたしを地上界に放り出すのだ

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