暖炉の薪の
ぱちぱち立てる火の粉を見る
そして手をかざして
においをかぐ
冬の匂いだ
記憶の後ろのほうから
何かをひっぱり出せそうな匂い
森の中を歩く
深々した枯葉の中に
皮のブーツを沈ませて
滑らないようにリズムよく
呼吸を整えて歩く
頭上の木々は大半の葉を落としたものの
暑く低い雲の広がった空からの
太陽の光は
もう地面には届かない
瓦葺の屋根が自慢の
築四百年のパブ
控えめなクリスマスの飾りを見ながら
古いテーブルに座り
酒をすする
記憶の中のワインは
なぜかいつも温かく甘い
かすかに漂うもみの木の匂いが
デジャブのように
今年と去年をつなぐ
コートを着て
マフラーをしかり巻いて
ドアノブに手を掛け
覚悟を決めるように寒空の下に踏み出す
空気の澄み切った冷たさが
肺にしみこむ
冬の匂いがつながる
それはまたもっと古いものにつながっている
たどる先にあるものは他愛ない情景だと
わかってはいるものの
それを頭の隅で
いつまでもたどり続ける
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