Sunday, 20 September 2009

無花果

今日スーパーに行くと
大きな無花果が並んでいた

指で
ひとつひとつ触ってみる
一番熟れた6つを袋に入れ
買い物籠の一番上に
ていねいにのせる
まるで鳥の雛を持ち上げるように
家までそっと持って帰る

白いお皿にひとつのせ
テーブルの上におく
椅子の上にまっすぐ腰掛け
背筋を伸ばして食べる

先端を折ると
白濁した液が練乳のように
どろりとたれる
ていねいに
できるだけ薄く皮をむく
記憶をぐるぐると
匙でかき混ぜるにおいがする

色白の女性の肌のような
赤く透ける白い塊を
口に運ぶ
一口噛み取る
頼りない感触のあとの
ざくっとした歯ざわり
そして
肉感的な甘み
ゆっくりと咀嚼し
そして飲み込む

皮を捨て
手を洗う
ミルクのついた指は
漆のごとくべとつき
後ろめたいことをしたかのように
水を流し続ける
いつまでも無花果の記憶にとらわれる

子供のころ庭に無花果の木があった
それに一度だけ実がなった
それを口にしたのかどうか、
どうしても思い出せない

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