今日スーパーに行くと
大きな無花果が並んでいた
指で
ひとつひとつ触ってみる
一番熟れた6つを袋に入れ
買い物籠の一番上に
ていねいにのせる
まるで鳥の雛を持ち上げるように
家までそっと持って帰る
白いお皿にひとつのせ
テーブルの上におく
椅子の上にまっすぐ腰掛け
背筋を伸ばして食べる
先端を折ると
白濁した液が練乳のように
どろりとたれる
ていねいに
できるだけ薄く皮をむく
記憶をぐるぐると
匙でかき混ぜるにおいがする
色白の女性の肌のような
赤く透ける白い塊を
口に運ぶ
一口噛み取る
頼りない感触のあとの
ざくっとした歯ざわり
そして
肉感的な甘み
ゆっくりと咀嚼し
そして飲み込む
皮を捨て
手を洗う
ミルクのついた指は
漆のごとくべとつき
後ろめたいことをしたかのように
水を流し続ける
いつまでも無花果の記憶にとらわれる
子供のころ庭に無花果の木があった
それに一度だけ実がなった
それを口にしたのかどうか、
どうしても思い出せない
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