ぽん
ぽん
ぽん
雲の立ち込める冬の午後
しんなりと冷えた空気に響く
ぽん
ぽん
乾かない洗濯物を取り込みながら
耳にするその音には
金属の響きはない
拍子抜けするほどに日常的な
動物的なその音が
銃の音だと気づいたのは
しばらくしてからだった
ビーターと呼ばれる子供や若者が
藪の中で草を打つと
驚いた雉は
ここっ
ここっと
哀しげな声を上げる
それを合図に
ハンター達が銃を撃つ
昔
たった一握りの米と小豆を盗んだために
病の娘に食べさせようと
蔵に忍び込んだために
人身御供になった男がいた
やっと病床から上がり
まりをつきながら
あずきまんまはおいしかったと
口ずさんだために
父親を失った幼い娘は
雉も鳴かずば撃たれまい
そうつぶやくと
二度と口を開かなかった
遥かな異国の地で
私は湿った洗濯物を手に
雉の飛び立つ音を聞く
ぽん
ぽん
ぽん
ぽん
迫力も殺意も生半可に
物憂げに響く銃声は
田舎の冬の景色の中に
ふやけてすいこまれる
ハンター達は雉をランドローバーに放り込み
暖炉の火ととウイスキーを求めて
パブに向かって歩いていく
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