車のミラーの蜘蛛の巣は
夜露に濡れ
早朝の光にきらめく
正確な編み手が
丁寧につむいだ
肉眼では見えないほどの細い糸
蜘蛛は巣を作るために
莫大なエネルギーをつかう
そして巣が壊れると
無駄にしないように
それを食べるという
蜘蛛の巣にかかった蝶を
放ってやったことがある
放したとて
羽が傷ついた蝶は
すぐに死んでしまうことは
知っていたものの
そのまま蜘蛛に食べられるのを
見ることができなかった
あのときの蜘蛛も
こうして
全力で緻密に
光をつむいだことだろう
さらに強まる光の中で
夜露は消え
巣はますます透明になる
かかることの無いエンジンの間近で
繊細に輝く光のタペストリーが
ひっそりと
獲物を誘い込む
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