Thursday, 11 March 2010

野の花


野に咲く花を摘んで
花瓶に飾る
見飽きた食卓の
そこだけが光を帯びる

野に咲く花ならば
そのまま咲かせておけばいいものを

季節の盛りの野の花は
誇らしく毅然と
完璧な姿を見せる
顔を太陽に向け
叫びも要求もせず
ただ咲き誇る

何十と咲き乱れるそのうちの
開花しきらない数本を
丁寧に摘む

選ばれた花は自慢げに
暖かい部屋で大きく花開き
芳香を放つ

けれども翌日には野の花は
少しだけ生気を失っている
かすかにわからないくらいに
もう腐敗は始まっている
水を替えても薬を入れても
時間はさらにスピードを上げる

家人が消えた夜の台所で
暗い部屋の中に浮かぶ花を見ながら
遠くの野原を思う
手折らなかった花は
今朝も光に顔を向け
咲いているのだろう

時間はゆっくりと進み
今日は一枚明日は二枚と
完璧なままに花弁を失い
種を膨らませていくのだろう

そして地に落ちた種は
あるものは腐り
あるものは食べられ
あるものは芽を出すのだろう

それでも食卓の花は
首を伸ばし咲き続ける
あと一日
あと一日と
そして食卓に光を集め続ける

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