風がこの世の終わりをつれてくる
ひゅるひゅると木々の間を抜け
轟々と
家を揺らす
世界の果てから
強く重い足音がやってくる
その騒動に煽られて
コートと帽子を着こんで
心を決めてドアを開ける
吹きつける風の中に
決定的な一歩を踏み出す
隣家のイチジクの大きな葉が
一斉にグレーの空に舞い上がり
私の庭は
枯葉の波に溺れれる
波はしけとなり
ぐるぐると渦を巻き
そして空に吹き上がる
鈍器のような空気が
暗雲を呼び寄せる
空が重く低くなり
スピードを上げて
闇が彼方から近づく
風がますます強まり
いよいよ
この世の終わりがやってくる
そして
巨大な醜い指が
the end と書かれた赤いボタンを押すと
一気に雨が落ちてくる
乱暴で粗雑な子供のように
激しい音を立てて
屋根や窓を叩く
庭があった場所で私は
腕を大きく開いて
顔を空に向けて
大粒の水滴を顔に受ける
強く
もっと強く頬を打て
口をあけて
のどに水を流し込む
ごくりと飲み込ん
あとは口から喉へ
絶え間ないよだれのように滴り落ちる
コートはぐっしょりぬれ重石となり
私を地面にしっかりと固定する
キリストの格好で
雨に打たれ
風を受け
闇を呼ぶ
雨は雹に変わり
家や車を破壊する
雹は雪に変わり
吹雪となり
視界を遮る
稲妻が瞬き
雷が落ちる
竜巻が暴れ始める
私は世界の中心に立ち
この世の終わりを呼ぶ
ますます近づく足音が
私を地面に強く縛り付ける
遠くなりかける意識にしがみつき
仁王立ちで
その光景を見届ける
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