Tuesday, 17 November 2009

この世の終わり

風がこの世の終わりをつれてくる
ひゅるひゅると木々の間を抜け
轟々と
家を揺らす
世界の果てから
強く重い足音がやってくる

その騒動に煽られて
コートと帽子を着こんで
心を決めてドアを開ける
吹きつける風の中に
決定的な一歩を踏み出す

隣家のイチジクの大きな葉が
一斉にグレーの空に舞い上がり
私の庭は
枯葉の波に溺れれる
波はしけとなり
ぐるぐると渦を巻き
そして空に吹き上がる

鈍器のような空気が
暗雲を呼び寄せる
空が重く低くなり
スピードを上げて
闇が彼方から近づく
風がますます強まり
いよいよ
この世の終わりがやってくる

そして
巨大な醜い指が
the end  と書かれた赤いボタンを押すと
一気に雨が落ちてくる
乱暴で粗雑な子供のように
激しい音を立てて
屋根や窓を叩く

庭があった場所で私は
腕を大きく開いて
顔を空に向けて
大粒の水滴を顔に受ける
強く
もっと強く頬を打て
口をあけて
のどに水を流し込む
ごくりと飲み込ん
あとは口から喉へ
絶え間ないよだれのように滴り落ちる

コートはぐっしょりぬれ重石となり
私を地面にしっかりと固定する

キリストの格好で
雨に打たれ
風を受け
闇を呼ぶ
雨は雹に変わり
家や車を破壊する
雹は雪に変わり
吹雪となり
視界を遮る
稲妻が瞬き
雷が落ちる
竜巻が暴れ始める

私は世界の中心に立ち
この世の終わりを呼ぶ
ますます近づく足音が
私を地面に強く縛り付ける
遠くなりかける意識にしがみつき
仁王立ちで
その光景を見届ける

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