Wednesday, 21 March 2012

何も無いところから生まれる

高速道路沿いの茂みに
りんごの木を見つける
光を浴びる紅葉に見えたのは
色づき重みを増したりんごだった

誰かが植えたのだろうか
10年以上も前に
雑草を取り払い地面を耕して
この道に苗を植えたのだろうか

それとも誰かがその昔
りんごの芯を草むらに放り込んだのか

湿った土の中で腐っていくりんごの芯
その中からつるつる光る緑の芽が
勇敢に頭をもたげる
鳥や獣が食み
カビにやられ
雑草に覆われる
いくつかの芽が命を吹き返し
いくつかの芽が
死んでいく

そうして何も無いところから生まれる

春の光をつかまえる
しだやイラクサに阻まれながら
太陽のぬくもりを受け止める
広葉樹の色の変わる頃には
りんごは一人前の苗木となり
枯れ葉にぬくぬくと包まれて
長い冬を迎える

低い潅木に囲まれた
木の幹に近づくこともできず
りんごの木を見上げる
もうすぐ冬がやって来ようかという今
りんごは最後のひと時を
枝にぶら下がり
堂々と陽を浴びる

次の北風とともに
木は赤く瑞々しい実を
惜しげもなく地面に撒き散らすだろう

そうして誰も拾わないりんごはまた
ころころと
新天地を求めて
ころころと
どこまでも転がっていく


 
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