Friday 15 January 2010

墓地

あの子のお墓は
横須賀の見晴らしの良い場所にあるらしい
整備された明るい墓地は
外人墓地のように
広々としているらしい

芝生は手入れが行き届き
水汲み場はすぐ隣
ずらりと並ぶお墓の列の
その一番端にあり
廻りも気がねしなくていいらしい

あの子を思う人たちが
あの子のために
墓石が汚れたらいつでも掃除が出来るように
良い場所を選んだんだね
暗く寂しくならないように
海の見渡せる場所で
風の歌を聴きながら
いつまでも緑に囲まれていられるように

それでもそんなところに
あの子はいなければいいと思う
小さく区分された石の下などではなく
海では魚となり
空ではツバメとなり
木々の間を渡っていく風となり
街と一緒に
人ごみと一緒に
あの子は自由に飛び跳ねていればいいと思う

その丘の上の墓地に行こうか
花も持たず線香も持たず
「あんたの人生、こんなちっぽけな石の下に納まってるよ」
と冗談めかして話しかけて
あの子が面白がって笑っているのを聞くために

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