Thursday, 31 January 2013

高速道路の林檎



高速道路沿いの茂みに
りんごの木を見つけた
紅葉が光を浴びているように見えたのは
色づき重みを増した林檎の実だった

誰が植えたのか
その昔に
誰かが雑草を取り払い
地面を耕して
苗を植えたのだろうか

それとも

誰かがある日
食べかけの林檎を草むらに放り込んだのか

湿った土の中で腐っていく林檎の芯
つるつる光る緑の芽が
勇ましく頭をもたげた
鳥が食み獣が踏み荒らす
カビに食われ雑草に覆われる
いくつかの芽が命を吹き返し
いくつかの芽が抵抗もせず死んでいく

そうして何もないところから形が生まれる

ひとつの芽が光をつかまえる
しだやイラクサに阻まれながら
太陽の温かみを受け止める
広葉樹の色の変わる秋には
林檎は一人前の苗木になり
枯葉にぬくぬくと包まれて
長い初めての冬を迎える

そして
その冬に道は開かれ整備され
高速道路が通った

車窓の向こうに過ぎ去っていった林檎の高い木を
私は心の中でまた見る
もうすぐまた冬がやってこようかというこの季節に
林檎は晩秋の最後の陽を
枝にぶら下がり堂々と浴びる

次の北風は
赤く瑞々しい実を
気前よく惜しげもなく撒き散らすだろう

そして誰も拾わない林檎は
新しい場所を見つけに
どんどんころがっていくだろう



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