Thursday, 7 March 2013



ごうごうとうなる音を
暖房のきいた部屋で聞く
急に暗くなった空が
雹を思い切り地面に叩きつける

玄関の防寒コートをわしづかみにし
長靴に足を突っ込んで外に飛び出す

次から次に飛び交うあられが
遠慮なく顔を打つ
痛さを感じると
同時にすぐに消えては
頬をべったりとぬらしていく

限られた視界の中で
風の方向に足を向ける
頬にへばりつく髪を払いのけながら
私の足はどこからが力に満ちて
しっかりと地面を踏んで
前を見る

左右の足を確かめるように動かしながら
一歩一歩地面に足を植え付け進む
顔を氷に打たれながら
ぐいとあごを上に向ける

絶え間なく顔を打つ冷たさは
少し心を引き立てる
指の先まで皮膚の表面まで
血が巡り始める
私は自分を風にさらして
心臓がどくんどくんと
息を吹き返したことを確かめる


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Wednesday, 13 February 2013



ごうごうとうなる音を
暖かい部屋で聞く
急に暗くなった空が
雹を思い切り
地面に叩きつける

玄関の防水コートを
わしづかみにし
長靴に足を突っ込んで
外にでる

固い冷たい雹が
次々に顔を強く打つ
そして痛さを感じた瞬間に
溶けて顔をべったりとぬらす

限られた視界の中で
風の方向に足を向ける
頬にへばりつく髪を払いのけながら
しっかりと地面を踏む私の足には
もうどこからか力が降りてきている

右と左と確かめるように動かしながら
一歩一歩地面に足を植え付け
進む
濡れたあごをぐっと上に向ける

頬の冷たい痛みは
少し心を引き立てる
指の先まで
皮膚の表面まで
血が流れる
心臓がどくんどくんと
リズムよく脈を刻みはじめる

威勢のいい小刻みな音が
少しでも長く続くようにと
息を止めて祈る


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Thursday, 31 January 2013

高速道路の林檎



高速道路沿いの茂みに
りんごの木を見つけた
紅葉が光を浴びているように見えたのは
色づき重みを増した林檎の実だった

誰が植えたのか
その昔に
誰かが雑草を取り払い
地面を耕して
苗を植えたのだろうか

それとも

誰かがある日
食べかけの林檎を草むらに放り込んだのか

湿った土の中で腐っていく林檎の芯
つるつる光る緑の芽が
勇ましく頭をもたげた
鳥が食み獣が踏み荒らす
カビに食われ雑草に覆われる
いくつかの芽が命を吹き返し
いくつかの芽が抵抗もせず死んでいく

そうして何もないところから形が生まれる

ひとつの芽が光をつかまえる
しだやイラクサに阻まれながら
太陽の温かみを受け止める
広葉樹の色の変わる秋には
林檎は一人前の苗木になり
枯葉にぬくぬくと包まれて
長い初めての冬を迎える

そして
その冬に道は開かれ整備され
高速道路が通った

車窓の向こうに過ぎ去っていった林檎の高い木を
私は心の中でまた見る
もうすぐまた冬がやってこようかというこの季節に
林檎は晩秋の最後の陽を
枝にぶら下がり堂々と浴びる

次の北風は
赤く瑞々しい実を
気前よく惜しげもなく撒き散らすだろう

そして誰も拾わない林檎は
新しい場所を見つけに
どんどんころがっていくだろう



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